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東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)171号 判決

(争いのない事実)

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いのないところである。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 前示本願発明の要旨に成立に争いのない甲第二号証(昭和五六年五月六日付手続補正書)を総合すれば、本願発明は、アスフアルトコンクリート舗装に廃物を利用するアスフアルト合材の製造方法に関する発明であつて、従来、道路舗装などに使用されていたアスフアルト合材は、改装その他のために除去した際には廃材として廃棄されていたが、そうすることは経済的な損失を招くだけでなく、廃材公害の原因ともなり、また、資源節約の観点からも好ましくないことから、廃物の中でも特にアスフアルト廃材をアスフアルトコンクリート舗装に再生利用することを目的ないし課題とし、本願発明の要旨(特許請求の範囲の記載に同じ。)のとおりの構成を採用したこと、右構成を採用することにより、廃材アスフアルト合材の廃棄による環境破壊を防止することができるとともに、石油資源を含めて資源を節約することができるという効果を奏すること、そして、本願発明で用いる廃材アスフアルト合材とは、アスフアルト、砕石(大、中、小)、砂、石粉を含むアスフアルトコンクリート舗装に使用された廃材を指し、廃材アスフアルト素材とは、廃材アスフアルト合材を高温で再生処理してアスフアルトが軟化し、その結合力が弱まり、砕石などの骨材が分離し、アスフアルトがその骨材に付着したものを指称するものと認められる。他方、第一引用例及び第二引用例(第一引用例及び第二引用例が本願発明の特許出願前国内において頒布された刊行物であることは原告の明らかに争わないところである。)に本件審決認定のとおりの事項が記載されていること(なお、第一引用例の再生廃材の処理方法が舗装廃材をクラツシヤーで破砕し、右破砕してできた再生廃材を加熱して溶融するものであることは当事者間に争いがないところである。)、並びに本願発明と第一引用例記載の方法との間に本件審決認定のとおりの相違点があることは原告の認めるところである。

ところで、原告は、本願発明では廃材アスフアルト合材を加熱溶融して再生アスフアルト素材をつくるのに対し、第一引用例記載の方法では廃材アスフアルト合材をクラツシヤーで破砕したものを加熱溶融しており、両者の再生アスフアルト素材のつくり方が著しく相違しているのに、本件審決は右相違点を看過した旨主張するから、この点について検討するに、本願発明の明細書(前掲甲第二号証)を精査するも、廃材アスフアルト合材を加熱して溶融するに当たり右合材をどのような形態にするかということについてこれを限定した記載はなく、しかも、本願発明にいう再生アスフアルト素材とは、前認定説示のとおり、廃材アスフアルト合材を高温で再生処理してアスフアルトが軟化し、その結合力が弱まり、砕石などの骨材が分離し、アスフアルトがその骨材に付着したものを指称するものと認められるところ、これは道路からはぎ取つた廃材アスフアルト合材をそのままの状態で加熱溶融しても、また、細粉砕してから加熱溶融しても得られるものと解され、また、右細粉砕したものであつても、前認定説示した本願発明の目的ないし課題を達成し、かつ、本願発明と同様の効果を奏するものと認められるから、本願発明で使用する廃材アスフアルト合材は、その形態を問わず、したがつて、細粉砕した廃材アスフアルト合材を含み、本願発明はこのような廃材アスフアルト合材を加熱溶融して再生アスフアルト素材を得る方法を包含しているものと解するのが相当である。そうすると、第一引用例記載の舗装廃材及び右舗装廃材をクラツシヤーで破砕してできた再生廃材は、いずれも本願発明のアスフアルト合材に、また、右再生廃材を加熱溶融したものは本願発明の再生アスフアルト素材にそれぞれ相当するものと解されるから、本願発明と第一引用例記載の方法との間に原告主張の相違点があるものと認めることはできず、したがつて、原告の右主張は採用することができない。なお、原告は、この点に関し、甲第六号証及び第七号証を挙示するが、成立に争いのない甲第六号証の第三三頁には、アスフアルトコンクリート再生骨材製造工程のフローシートの例が記載され、再生骨材を得るのに大別して機械破砕方式と熱解砕方式(具体的には、スチーム方式、温水方式、熱風方式)とがあることが、また、成立に争いのない甲第七号証の第二七頁ないし第二八頁には、はぎ取つたアスフアルト合材の破砕方式には、機械的破砕法(機械的に破砕する方法)、温湯式破砕法(温度によつてアスフアルトの粘性を減じて破砕する方法)、蒸気式破砕法(蒸気によつて破砕する方法)があることが示されているが、これらの文献はいずれも本願発明の特許出願後に頒布された文献であつて、その記載内容から本願発明の特許出願当時の技術水準を示すものと直ちに断定することができないばかりか、右文献に示される機械的に破砕する方法とは、廃材アスフアルト合材を機械的に破砕するだけで加熱を行うことなく再生骨材をつくる方法であつて、第一引用例記載の方法とは異なる方法であり、したがつて、第一引用例記載の方法が右文献に示される機械的に破砕する方法に該当しないことは明らかであるから、原告挙示の上掲各証拠は前段認定を覆すに足りる証拠とすることができない。また、原告は、本願発明にいう廃材アスフアルト合材に細粉砕された廃材アスフアルト合材が含まれるとすると、本願発明の明細書の発明の詳細な説明の項の記載は矛盾したものとなる旨主張するが、前掲甲第二号証によると、原告指摘の(1)の記載については、その前後の、「現在、アスフアルトコンクリート舗装において使用されている材料は、アスフアルト、砕石(大、中、小)、砂、石粉である。………したがつて、廃材アスフアルト合材を再生して利用すれば、同じ材料のアスフアルト合材を製造できるのである。」(同号証第二頁第一行ないし第七行)との記載からみて、単に、廃材アスフアルト合材の組成成分について説明した記載であつて、廃材アスフアルト合材中の砕石の形態に関する記載とは認めることができないから、本願発明に使用する廃材アスフアルト合材には細粉砕した廃材アスフアルト合材が含まれるものと解することと何ら矛盾する記載とはいえない。また、原告指摘の(2)及び(3)の記載も、前掲甲第二号証によれば、本願発明の明細書の発明の詳細な説明の項中「従来、道路舗装などに使用されていたアスフアルト合材は、改装その他のために除去した際には、廃材として廃棄されていた。しかし、そのようなアスフアルト廃材を廃棄するのは、経済的な損失を招くだけではなく、廃材公害の原因ともなる。資源節約の観点からも好ましくない。」(甲第二号証第一頁発明の詳細な説明の項第四行ないし第九行)との記載を受けた記載であつて、舗装道路の改装などで除去した際に生ずる廃材アスフアルト合材を廃棄したのでは公害が生じたり、また、資源的にみても不経済であるので、これを再利用することにより、右の不都合を一挙に解決したことを説明しているにすぎず、廃材アスフアルト合材を再利用するに際し、そのまま加熱して溶融するか、あるいは細粉砕してから加熱して溶融するかという再利用の具体的手段を特定する記載でないことは明らかであつて、本願発明における廃材アスフアルト合材に細粉砕した廃材アスフアルト合材を含むと解することと何ら矛盾する記載とはいい得ない。したがつて、原告の右主張も採用することができない。

次に、原告は、本件審決は、第一引用例記載の方法と異なる本願発明の特有の効果を看過した旨主張するので検討するに、廃材アスフアルト合材をクラツシヤーで破砕すれば、右合材中の大きな砕石(骨材)は細かく破砕され、大きな砕石(骨材)をそのままの形状で再生することができなくなるであろうことは容易に理解し得るところであるが、前認定説示のとおり、本願発明は、本願発明に用いる廃材アスフアルト合材の形態を限定しておらず、本願発明に用いる廃材アスフアルト合材には機械的に破砕した右合材も含まれ、廃材アスフアルト合材をクラツシヤーで破砕して加熱溶融して再生アスフアルト素材をつくるか、あるいは破砕することなく加熱溶融して再生アスフアルト素材をつくるかは、本願発明を実施するに際し、廃材アスフアルト合材を再生してつくる新たなアスフアルト合材の用途に応じて決せられる事項にすぎないから、廃材アスフアルト合材を破砕することなく加熱溶融することにより、大きな寸法の新たな砕石(骨材)を供給しなくてももとの舗装に使用することができるという原告主張の効果は、本願発明の一実施態様の奏する効果であつて、本願発明そのものの奏する効果ということができない。そうすると、本件審決が本願発明の奏する第一引用例記載の方法にはない特有の効果を看過したものということはできないから、原告の右主張は採用するに由ない。なお、原告は、この点に関連して、廃材アスフアルト合材をクラツシヤーで細粉砕すれば、新たに粉塵公害と騒音公害が生ずる旨主張するが、本願発明は前認定説示のとおり、廃材アスフアルト合材の廃棄による公害及び環境破壊の発生を解決すべき課題の一つとして掲げ、本願発明の構成を採用することにより右課題を解決することができるという効果を奏するものであつて、粉塵公害と騒音公害を解決すべき課題とするものではないから、原告の右主張は明細書の記載に基づかない主張であつて、失当である。

叙上認定説示したところによれば、本願発明は、第一引用例及び第二引用例の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものとみるのが相当であり、したがつて、本件審決の認定判断は正当というべきである。

(結語)

三 以上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却することとする。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

廃材アスフアルト合材を加熱して高温の状態で再生して、再生アスフアルト素材をつくり、その再生アスフアルト素材を新品のアスフアルト合材と混合し、かつ、高温の状態で油類を混入し、アスフアルト合材を製造することを特徴とする、アスフアルト合材の製造方法。

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